『地球の○○し方』
これじゃあ、『地球の歩き方』じゃなくて『地球のだまし方』よ!
実は私、バックパッカー時代、
口の悪い仲間うちで、しょっちゅう悪態ついてました。
いえ、『歩き方』さんには本当にお世話になっているのです。
放浪のひとり旅ではもちろん、仕事で海外添乗に出るときも、
必ずカバンにしのばせてます。
似たようなガイドブックは山ほどありますが、
充実度は『歩き方』がピカイチ、
間違いなく、一番つかえるガイドブックでしょう。
ただ…。
『歩き方』の特徴は、とっても主観的ということです。
読者の旅のエピソードなんかも満載で、
(私もはりきって投稿してました)
だからこそ面白いのだけれども。
忘れられないのは、まだ二十歳の夏のヨーロッパひとり旅。
世間では、沢木耕太郎の『深夜特急』がリバイバル人気。
影響を受けやすい私は、行き先も決めぬまま、
ドイツのベルリンに降り立ちました。
決まっていたのは1ヶ月後、ローマから日本に帰るということだけ――。
旅のバイブルは、『地球の歩き方 ヨーロッパ』
北欧からギリシャまで、ぜーんぶ載った分厚く重いページを繰りながら
明日はどこへ行こう?と悩むのが、
楽しくも判断力を試される毎晩の日課でした。
そんなある夜、ふと目のとまった1ページ。
番外編ということで、北アフリカはモロッコの体験談が
小さく紹介されておりました。
そのなかの一行がこちら。
「マラケシュのジャマエルフナ広場の喧騒は、この世のものとは思えない」
この世のものとは思えない…
ずーっと頭のなかをぐるぐるリフレインするこの一言。
行きたいなぁ、でもアフリカかぁ。ちょっと怖いなぁ…。
迷うこと数日。最後はエイヤと思いきり、
スペインの南端からアフリカ大陸めざしてフェリーに乗り込んだのでした。
――そして数時間後。
降り立ったのは、モロッコの港町タンジェール。
アフリカは目と鼻の先にありました。
とはいえ、ターバンを巻いた男たちがうろうろし、まったくの異世界。
目指すマラケシュは、まだまだ先。
月光が妖しく照らす砂漠を夜行列車でひた走り、
辿りついた砂漠のオアシス、マラケシュの町は…。
あれ? 別にふつう。
いや、でも、そのジャマなんとか広場へ行けばきっと…。
最高潮に高まる期待と、かすかに生じた不安を抱きつつ、
ようやくジャマエルフナ広場の喧騒を前にしての感想は?
「…どう見ても、この世のもの」
あぁーっ、また騙された!