銀のステッキ

「Nさん、ちゃんとしてくださいね、ちゃんと」

帰り際スタッフに、やや強めに、しかも低音で言われました。

「わかってるよ、大丈夫」

と、言ったものの、周りの空気は、あまり芳しくもなく・・・

皆が、私を見ていました。

信用ないのね。

「今回は、新規のお客様も多いのですから」

スタッフは、ひつこく追い込みをかけてきました。

「大丈夫だって、さすがに私もちゃんと添乗できるよ」

「違いますよ！お馴染みさんもたくさん参加されていますから、

その皆さんへのいつもの応対を、新しいお客様に見せないでくださいね！」

あっ。

はい。

この度、大型バスで出発することになった日帰り旅行。

もちろん、銀ステでは、たいへん稀なる出来事。

と、スタッフの心配事は、

自身が手配する、夏のビックイベントに、

ホームページから、参加を申し出てくださった、

これまた、銀ステでは稀なお客様があって、

しかも、その方がまず手始めにと、明日のバスツアーに来られることに

あるようです。

「キャンセルにでもなったら困りますから、ちゃんと」

はーい。

自身も久しぶりの、40名のお客様。

確かに、知らないお顔ぶればかり。

これは、腕がなります！？

と、先ほど、携帯が鳴って、、、、

着信履歴には、見慣れたお客様の名前。

「ちょっと、明日、40名って本当なの？若い人ばっかりじゃないの？

私不安で、不安で。足手まといにならないかと、心配で」

「大丈夫ですよ、銀ステに足手まといにならない人は、一人もいませんよ。

安心してください」

あっ。

こういうことを言わないように、

明日は、ちゃんと添乗員してきます。

大丈夫。

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