まりっじブルース
朝、懐かしいお声のお電話。
ご夫婦で仲良くお店をされているお客さまからです。
来年はご主人の古希、そしてご結婚40周年ということで
「ずっと先だけれども…」 と仰りながら、来年のお盆に予定されているという
そのお祝いの記念旅行のご依頼をいただきました。
ご商売をされているので、お盆と正月しか休めないのが残念で…とのこと。
お話をうかがいながら、ご夫婦でお店を切り盛りされているこちらのお客様のこと、
以前より、もっともっと身近に感じているような気がしました。
きっと立場が変わったせいでしょう。
――立場が変わり、日々の仕事も変わりました。
これまでは組織の一員。仕事はある意味、ルーティーン。
でも今は毎日、なにかしら、初めての仕事にぶつかります。
今日は宝塚市の電話帳を手に、団体旅行の営業電話にチャレンジしてみました。
会社や団体の電話番号を掲載したハローページをビリリと半分に引き裂き、2人で分担。
どの職場にも比較的のんびりしたひとときが流れると思われる午後3時にスタートし、
「この秋の貸切旅行のご予定はございませんか?」
私の担当ページは、ちょうど学童保育から始まっていました。
へー、市内だけでもけっこうあるものです。
「はい、○○学童保育です――」
電話がつながったとたん、うしろでは声にならない声で、「ウギャー!」「ウォー!」
夏休みでエネルギーのありあまった子供たちが、おやつタイムで大はしゃぎしている様子。
かと思うと、不思議とシンと静まり返った電話口で、先方さんもひそひそ声。
「ごめんなさい。今、お昼寝の時間なので…」
はるか彼方の夏の日、学童保育で過ごしたカギッ子の頃の記憶が、
なつかしい指導員の先生の笑顔とともによみがえってきました。
お電話に出られた指導員の方々は、みなさんテキパキと
ややこしい時間帯にかかってきた営業電話に、手際よく愛想よく応対。
ありがたいことです。
順調に件数をこなす私の横で、相方さんは沈んだ顔。
聞けば、「…電話がつながらない。廃業しているところがやたら多い」
先日からいろんな場面で見えてくる、ひとつの現実。
会社を作るのは、意外とカンタン。
たいへんなのは継続させること。
それを熟知しておられるに違いない今朝のご夫婦からの、
1年以上先の、結婚40周年を祝う大切な記念旅行。
身の引きしまる思いでした。