オロチ、おそろし、おろち
「明日はいよいよ闘牛サミット!」
「いいなぁ、こっちは真夏のタイガース並みの添乗ロードです」
そんなやりとりを仲間としつつ、
白神山地を訪ねた青森でわさおに出会い、
翌日からは地元のロータリークラブさんとご一緒に出雲を訪ねた一週間でした。
添乗明けのオフ、この日を逃してはたいへんと、
地元のネッツさんに車検に行ってまいりました。
ペーパードライバーを脱出したのが去年のこと。
ですから、まだまだこちらでは新顔です。
けれども、営業マンからはしっかりマークされています。
なぜなら――車があまりにぼろっちいから。
もともとは真っ赤でイカした中古車だったのですが、
1日中、陽のあたる駐車場に置いているのがいけないのか、
去年ぐらいからボンネットの薄皮がぽろぽろはがれはじめ、
今ではすっかり、日焼け肌。もろもろ。
正直、みっともない。
買い替えターゲット客として、しっかり目をつけられているのです。
今回の車検を前にも、たくさんパンフレットを持ってこられましたが、
気をもたせたらかえってお気の毒です。
はっきりお断りしました。
「当分、買い換えるのはムリです。
なぜなら車の代わりに牛を買ってしまいましたので。
それに、こないだミャンマーに行ってきましたけど、
もっとぼろぼろの車がぶんぶん走ってましたよ」
そんなやりとりで担当者を黙らせたのが、こないだのこと。
もうすっかり諦めてらっしゃるのか、
きのうは車検を待つ間、ひとりでほっといてくれました。
その間、読んでいたのが、「出雲神話」です。
国引きの神話、因幡のシロウサギ、オオクニヌシの国譲り…。
前日まで訪ねみてきた風景でもあり、
壮大な物語と実際の地形とが見事に重なりあって、ひきこまれました。
とくに、ははぁと得心したのが、ヤマタノオロチを巡る一説です。
八つの頭、八つの尾をもつヤマタノオロチ。
オロチとは実は、この地を流れる斐伊川(ひいがわ)ではないか。
オロチが娘を食らうとは、暴れ川だった斐伊川が氾濫し、流域の田畑や百姓を呑みこんでしまうこと。
スサノオのオロチ退治は、斐伊川の治水に成功し、土地を救ったということ…。
おろちの名は「おそろし」から転じたともあり、なるほど! 納得!!
ぱたんと本を閉じて、出雲はたしかに神話の土地だ…と思いにふけっていると、
整備の方がにこにことやってきました。
無事、終わりましたよと仰るので、
「外見はぼろぼろだけど、中身は大丈夫ってことですか?」と訊くと、
はいそうです、と、にこにこ。
まだまだ乗ってやって下さい、と。
となりでは営業マンがしぶ~い顔をして立っています。
もう2年後の車検に向けての営業に切り替えられたのか、
「どんな車が好きなんですか、興味ある車とかないんですか」と問われたので
オロチです、と即答しました。
富山県の自動車メーカー、光岡が製造するスーパーカー、「オロチ」。
キャッチコピーもかっこいい。
「このクルマは、如何なる獲物も、喰い破る。 異端系、最上位クラス」
オロチ、ですか…と、またも絶句する営業マン。
でも残念ながら、オロチは2年前に生産終了。
これまでも、これからも、乗ることはないでしょう。
当分は、整備の方の太鼓判の笑顔を思い出しながら、
今のオンボロ車とつきあっていこうと思います。
*********************************
バス旅行、オーダメイド旅行のご相談は…
銀のステッキ旅行
TEL 0797-91-2260(平日8:30~17:00)
■銀のステッキは会員制の「旅サロン」を主催しています。
■公式ホームページ:http://www.gin-st.com
**********************************