今日の天使は…
7月に入って、ちょうど1週間。
「きょう、七夕って知ってた?」
朝の電車では男子高校生がはしゃいでいたけれど、
こちらは夏バテなのか、なんとなく調子のあがらない、パッとしない1日。
仕事もたいしてはかどらず、早々に帰途につきました。
帰りの電車を待つ列に並びながらも、いつもより体が重い。
こんな日は、小難しい本は頭に入らないから、
ばかばかしくて面白い、中島らもさんがちょうどいい。
ふだんなら、来た電車に乗るのだけれど、今日はもう1本待って座って帰ろう…。
そのつもりで、ホームにすべりこんできた電車を見送ろうとしたら、
隣の車両に盲導犬が乗りこむのが見えました。
…!
急遽、予定変更して、ついでに車両も変更して、あわてて盲導犬のあとを追いかけた―
…いたいた。
盲導犬でお馴染みの大きなラブラドール犬。
優先席に腰かけるご主人の足もとで、お利口に「ふせ」の姿勢を保っている。
こちらは、ワンちゃんの真正面の位置をしっかりキープし、満足。かわいいなぁ。
犬は大好き。
犬が出てくると、テレビ画面から目が離せないぐらいに好き。
ソフトバンクの白いお父さん犬には、もう釘づけ。
こういう人、世の中に多いはず。
以前に、関西発の人気番組、『探偵!ナイトスクープ』の企画で、
大泣きしている赤ちゃんにタケモトピアノのCMを見せれば、
ぴたりと泣きやむ、というものがありました。
赤ちゃんたち、銀色の衣装を着たお姉さんの不思議なダンスに夢中になって
泣くのを忘れるそうですが、それに近い。
小学生のころ、親に頼みこんで犬を飼いはじめて以来、
何代かにわたって、犬はつねに生活の一部でした。
いまではメスの柴犬が家族の一員。
…ところがこの子、犬には珍しくやたらと気位が高くて、
愛想なしでツンとしているし、気が向いたときしか寄ってこないし、
帰っても尻尾をふるわけでもないし、へたになでるとウーッと威嚇してくるし、
これじゃあ、まるで猫。
犬だと思うから腹も立つ。女の子が、ツンと澄ましてると思うから憎たらしい。
というわけで、うちではこの子を「メスの犬」ではなく、「オスの猫」と思うようにしている。
だから今、我が家に犬はいないも同然なのよね――
床にぺたんと寝そべるラブラドール犬のくつろいだ顔を眺めながら、
そんなことをぼんやり考えてると、
駅についたのでしょう、ご主人が立ち上がり、つづいてワンちゃんも。
立ち上がったその背中には、「お仕事中です」の文字。
いつしか表情もきりりと引きしまったワンちゃんに導かれて、ご主人は降りていきました。
えらいなぁ、あの子は。あんなキリッとした顔して「お仕事中」だって。
私も見習わないと。
ワンちゃんが降りてしまったので、
ふたたび読み始めた中島らもさんの本に、次の言葉が。
「どんな日だって、必ず1日に1度、あなただけの天使が通りすぎる」
今日の天使は、まちがいなくあのワンちゃんです。