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2013/11/16

壱岐・対馬で見つけた「旅の十か条」


旅先での楽しみのひとつに、本を探すことがあります。

その土地の美術館や博物館、小さな空港の売店には
地域ゆかりの偉人伝や郷土史、地元新聞社が出版した本など、
街の大型書店では決してお目にかかれないような本が並んでいるものです。

昨日まで訪ねた長崎県、壱岐・対馬。
行く先々の売店で
必ずといっていいほど並んでいた冊子がありました。

小松津代司著 『宮本常一の足跡 壱岐・対馬を巡る』

何の予備知識もなくぱらぱらっと手に取ってみて、
「旅の十か条」という文字に目が留まりました。

民俗学者の宮本常一氏。

氏がまだ15歳だったころ、故郷の山口県周防大島を離れ、
大阪に働きに出ることになったときに、父親から送られたメモ書き。
それが「旅の十か条」として紹介されていました。

****** ***** *****
1.
汽車に乗ったら窓から外をよく見よ。
田や畑に何が植えられているか、育ちがよいか悪いか、
村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうところをよく見よ。
駅へ着いたら人の乗り降りに注意せよ。そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。
また駅の荷置き場にどういう荷が置かれているかをよく見よ。
そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。

2.
村でも町でも新しく訪ねていったところは必ず高いところへ上って見よ。
そして方向を知り、目立つものを見よ。
峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、
家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ。
そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへは必ず行ってみることだ。
高いところでよく見ておいたら道にまようことはほとんどない。

3.
金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。
その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

4.
時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。
いろいろのことを教えられる。

5.
金というものはもうけるのはそんなに難しくない。
しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れぬように。

6.
私はおまえを思うように勉強させてやることができない。
だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。
しかし体は大切にせよ。30歳まではおまえを勘当したつもりでいる。
しかし30過ぎたら親のあることを思い出せ。

7.
ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい。
親はいつでも待っている。

8.
これからさきは子が親に孝行する時代ではない。
親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。

9.
自分でよいと思ったことはやってみよ。
それで失敗したからといって、親は責めはしない。

10.
人の見のこしたものを見るようにせよ。
その中にいつも大事なものがあるはずだ。
あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。

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島を出て働き、見聞を広めなさい。
そんな気風が氏の故郷にはあったのだそうです。

15歳だった少年は、のちに民俗学に進み、
戦前から高度成長期にかけて
日本の津々浦々を訪ね歩いては(泊まった民家は1200軒以上とも!)
「忘れられた日本人」を記録していくことになります。

初めて訪ねた壱岐・対馬。
イカも美味しかったし、温泉も気持ちよかったですが、
それ以上に嬉しかったのは、「旅の十か条」を見つけたこと。

そして、そのメモ書きをずっと胸に携えて
生涯を歩きつづけた魅力的な人物に出会えたことでした。

*写真は壱岐のイルカタクシーと「猿岩」です。

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