夢のホエールウォーッチング
たとえば、ホエールウォーッチング。
確実に見られるとは言い切れないものを見にいくツアーほど、
添乗員として緊張するものはありません。
季節、場所、予備日…。
もちろんいろいろな条件を鑑みて、
「よっぽど運が悪くなければ、まず見られるだろう」
という行程を組むわけですが、それが余計にプレッシャー。
なかなか見られないときは、日を追うごとに、有言無言の圧力をひしひしと感じます。
初めてのホエールウォーッチングは、オーストラリアのフレーザー島。
東海岸のブリスベンから北へ250キロに浮かぶ、世界最大の砂の島です。
手ですくうとさらさら指からこぼれ落ちる、白く、こまかな砂。
そこに亜熱帯の木々がしっかり根をはり、
白砂のジャングルという独特の景観を作りあげています。
フレーザー島がオーストラリアのクジラ見学のメッカだとすると、
日本のメッカはもちろん小笠原諸島。
添乗員としてその両方をご案内しましたが、
日頃のおこないがよほど良かったのか、
小笠原でもフレーザー島でも、しっかりクジラはご覧いただけた…ようです。
というのも――。
クジラを見るのは、定員20名~30名の小さな船。
当然、入り江ではなく、大海原へと行かねばなりません。
ザッパーン、ザッパーン…。
甲板に吹き上げる波しぶき。
遊園地のメリーゴーランドに乗ったかのような揺れに、絶え間なくおそわれます。
もうお分かりでしょう。
出港から30分もすると、20~30名ほどが乗り込んだその船のなかで、
添乗員である私が、誰よりも先にグロッキーになってしまうのです。
今ここで降ろして…。
泳げないことも忘れて、そう祈りつづけるほど、それはつらく長い時間です。
揺れの一番少ないと思われる甲板の最後尾にうずくまり、
(でもそこはたいてい、一番、波しぶきのかかるところで)
10秒に1度、波を頭からかぶりながら
ひたすら目をつぶり、石のように固まっているだけ。
至近距離をクジラが泳ぎ、吹き上げる潮に周りが歓声をあげても、
チラッと顔をあげることすらできない。
よほど日頃のおこないがアレなんでしょう。
周囲100m以内にクジラは来てくれているのに、
まだ一度も、この目でクジラを見たことがありません。
へろへろで船から転がり降りたあと、恐縮する私に、
「途中から、クジラよりもあなたを見てるほうが面白かったよ」
そんな優しい言葉で慰めてくれたお客さま。
ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
****************************************
貸切バス・オーダメイド旅行のご相談は…
銀のステッキ旅行
TEL 0797-91-2260(平日8:30~17:00)
■公式ホームページ:http://www.gin-st.com
■銀ステ旅先案内人:http://ameblo.jp/arailuka
****************************************