能勢の菊炭の炭焼き師さん
バス会社さんを訪問したのは、寒い寒い朝でした。
その日はもう一軒、アポがあり、
予定よりちょっと遅れたことを気にしながら、
吐く息を白くして、事務所の引き戸をがらりと開けると――
オレンジ色の灯りと温かさが出迎えてくれました。
切り口が菊のように美しいから、菊炭。
「やぁ、いらっしゃい!」 と、黒い手で名刺を差し出してくれたのは、
炭焼き師の小谷義隆さん。
2月に予定しているツアーの下見で、
大阪と兵庫のちょうど県境に位置する能勢町に、
炭焼きの里を訪ねました。
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五百年以上、茶の湯で評価される最高級の炭
燃えたあとも形が崩れず、真っ白な灰が残るのが特徴
数百年前と基本は同じ、人が熱さに耐えながら作っていきます
(小谷さんが運営される能勢さとやま創造館のホームページより)
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冬は炭焼き師さんにとって、もっとも忙しい季節。
炭を焼いているところを見せてあげましょう、と
窯へと連れていってくださいました。
菊炭の原料となるのは、冬のクヌギ。
寒さのため、あまり水を吸わなくなったころに伐採することで、
炭になったときに美しい菊の文様が生まれるのだそう。
「火をいれたら六日間つきっきり。
冷ますのに、また六日間。」
「で、まだ100度ぐらいの余熱があるうちに、
窯にもぐりこんで取り出すんです。
もう、へろへろになりますよ。
出てきたときには、顔も頭もわからんぐらい真っ黒で」
そうやって丁寧に教えてもらっても、
仕事の流れの全体像ってなかなか見えないものです。
わからなかったことを聞いてみました。
そうやって、できた炭はどこへ?
小谷さんの仕事相手は、だれになるんですか?
「僕の仕事相手は…」
一呼吸おいて、答えられました。
「お茶の先生です」
「あなたの焼いた菊炭がほしい、
この初釜だけは、ぜったいにお宅の菊炭でないと。
そう言ってもらえるから、
こんな真っ黒になりながらでも、やっていけるんやと思います」
その言葉に、あぁやっぱりと、この日2回目に思いました。
だれかの仕事を支えるもの。
それはきっと、別の誰かのまなざしなのです。
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