☰ ブログメニュー
2026/10/10

チャツボミゴケという生き方


ここ数年でしょうか、ふだんの仕事のなかで「チケット取り」の業務が増えました。以前はJRの指定席1ヶ月前販売や、舞台の売出日ぐらいだったのですが、最近では美術館の事前予約が当たり前に。私鉄の席指定サービスや、老舗の昆布屋さんがカウンターで提供する「昆布らぁめん」の時間指定予約なんてのもありました。商品としてのモノだけでなく、時間や空間までが売り買いされる時代になったということなのでしょう。
(ちなみに、草津温泉の湯もみでは昔ながらの入場方法で、必死で並んでなんとか潜り込みました)

みんなが欲しがるから競争になる。でも「競争しない」という選択肢もある。
それを教えてくれたのが、先日訪ねた群馬県のチャツボミゴケ公園でした。
漢字で書くなら「茶・蕾・苔」。草津温泉から車で北へ30分ほど、中之条町の山間にあります。
植物の生存競争は苛烈です。自らは動けないため、どこで生を受けるががポイント。チャツボミゴケが選んだのは、他の植物がほとんど生息できない強酸性(pH2.0~㏗4.6)の土壌でした。ちなみに世界には約18,000種のコケ類があり、その中で最も耐酸性が強いのだとか。

なぜ、それほど強酸性の土壌ができたのか。チャツボミゴケの群生地が広がるのは、実は鉄鉱山の跡地。昭和40年まで露天掘りの採掘がおこなわれていた、旧群馬鉄山の最上部、その名も「穴地獄」と呼ばれたエリアです。多量の鉄分を溶解した水が溜まり、沈殿し、堆積してできた沈殿鉱床があった場所です。そうして、他の植物や魚は生きられない強酸性の土地に、チャツボミゴケの楽園ができあがったのです。

さて、競争しない戦略のチャツボミゴケとは裏腹に、人間社会は競争必至。泊りは、新規オープンが相次ぐ星野リゾートの「界草津」でした。新しさはひとつの魅力ですが、ホテルでいちばん大切なのは、時間が育む何か、なのかなぁ…と。(部屋からの眺め。奥がラウンジと温泉棟)

ちなみに草津の湯も強酸性。強力な殺菌力を誇る泉質は、恋の病以外なら何でも治してくれるそうです。

 

この記事をシェアする