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2026/11/02

桧枝岐村の隣は、なじみの土地でした

自分が行きたい場所を企画して、お客さんを集め、喜んでいそいそと添乗に出る。これが最善のカタチなわけですが、秋は繁忙期なので、自分の担当でないツアーもまわってきます。この秋、思いがけず添乗があたったのは、福島県の桧枝岐(ひのえまた)村。まったく知らない土地です。


(桧枝岐村の農村舞台)

「ここ、一番好きな場所なんです」。添乗前の打ち合わせで企画担当者が言ったので、へぇ~っとなりました。ほうぼう訪ね歩いている旅行業の人間が「一番好き」というのだから、なかなかの場所のはず。それは楽しみ、と頷いていたら、相手は地図を広げ、「さて、どこでしょう」と訊いてきました。う~ん、、以前なら目を皿にして探すのですが、最近、小さな文字は、はなから諦めます。あてずっぽうに「この辺?」と指さしたらブーッ、不正解。桧枝岐村は、どんと横幅のある福島県の、いちばん西の隅っこにありました。

      ↑ このあたり。奥会津と呼ばれる地域です。

思うに多くの関西人にとって、都道府県でもっともあやふやなのか、日本列島が太く折れ曲がった部分の真ん中あたり。具体的には、福島、栃木、埼玉、群馬、長野、岐阜などの内陸部ではないでしょうか。どこが何県なんだか、県名のジグソーパズルをさせたら、正答率は半分いかないんじゃないかと…(自分基準の勝手な憶測)。とくに兵庫県民がいけません。自分の県が日本海から瀬戸内海までどっちゃりのさばってるため、「海なし県」の見つけ方がわからない。どこも、とらえどころがないなぁ、、と思ってしまうのです。

さて、関西から桧枝岐村は遠かった。まず新幹線で東京へ。東北新幹線に乗り換えて栃木県の那須塩原まで。そこから貸切タクシーで2時間半かけてようやく到着、という道のりです。

東から北へと新幹線を乗り継ぎ、さらには西方向へ車にも揺られ、どっちを向いているのかも分からなくなった夕方4時ごろ、ようやく桧枝岐村にたどりつきました。

〈あれ、この風景、知ってる・・・〉初めての土地のはずなのに、わきあがってきたのは懐かしさでした。目に飛びこんできたのは、民家の屋根の形です。瓦屋根は見当たらず、ほとんどが鋼板を葺いた鋭角の三角屋根。よく見ると最上部は、鬼の角のように出っ張り、とんがっています。


(写真は山古志)

これは、私にとって「一番好き」な場所候補のひとつ、新潟県の山古志でよく見かけた屋根です。山古志といえば、積雪量が2~3mにもなる日本有数の豪雪地帯。この屋根のとんがりのおかげで、雪下ろしをせずとも、ある程度積もれば勝手にドサッと滑り落ちてくれる優れものなのです。

この日のお宿、「旅館ひのえまた」さんのご主人に伺うと、やはりこのあたりも豪雪地帯とのこと。なめらかな秘湯にぬくもり、滋味あふれる山人料理をいただいたあと、あらためて地図を眺めていて、へぇ~っと驚きました。山古志(新潟県)と桧枝岐村(福島県)は、いうなれば山をへだてたお隣さん。屋根の形がそっくりなのも納得です。なじみ深い山古志とつながったことで、桧枝岐村が一気に身近になりました。
明日はいよいよハイライト、絶景のローカル線として人気のJR只見線です。

JR只見線の路線図を見ていて、あらためて、おぉっ!となりました。今回、私たちが乗るのは会津地方のみですが、只見線そのものは、会津若松駅から新潟県の小出駅までを結んでいます(総距離は135㎞)。小出駅のふたつ向こうは、浦佐駅。浦佐まで行けば、山古志はもう目と鼻の先です。

只見線は2011年、大きな試練に二度、見舞われました。ひとつはもちろん、3月の東日本大震災。もうひとつが、同じ年の7月に会津を襲った豪雨です。只見川が氾濫し、橋梁がいくつも流されて鉄路は寸断、そのまま廃線になってもおかしくない状況をくつがえしたのは、地元の方々の熱意でした。豪雪地帯ゆえ、冬のあいだ、新潟へと抜ける国道252号線は通行止めに。唯一の交通機関となる只見線を守りたいと、JRや国に要望を重ね、寄付を広く募り、観光のPRにも努めて・・・、福島県と沿線の13自治体が施設を保有し、JRが運行する「上下分離方式」での存続が決まったのが今から10年前。長い復旧工事期間を経て、ふたたび全線が復旧したのは2022年。震災の年から11年が経っていました。

湖かと見まがうほどゆったりした流れの只見川。この川が橋を押し流すほどに氾濫したとは…。

福島県のお隣は、新潟県。歴史を遡れば、会津藩の隣が長岡藩。幕末にはともに旧幕府軍として、新政府軍と戦った歴史も。

会津若松の鶴ケ城と、白虎隊が学んだ会津藩校・日新館。。

あやふやだった地域のジグソーパズルが、ぴたりとはまって埋まった3日間。初対面のつもりの奥会津が、古い友人・山古志の幼馴染みとわかって、一足飛びに親しくなれたような時間でした。

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